
本研究会は,日本海における鯨類に関する研究ならびに理解の普及を促進するとともに,情報収集のネットワークをつくることを目的としております。昨年度は,福岡市にある"マリンワールド海の中道"海洋生態科学館において創立10周年記念大会を開催し,日本海セトロジー研究にふさわしい活動基盤の拡充をはかることができました。また,会の名称を「研究グループ」から「研究会」に改めるとともに,毎年開催する研究集会を「研究会」から「大会」に改称いたしました。今年度は,本学ならびに石川県の補助金を得て,通算10回目の記念すべき大会を開催することになりました。ご支援いただいた各機関ならびに各位に心から御礼申し上げます。
さて,1980年代,日本海の鯨類をめぐって能登では注目に値する出来事があいつぎました。まず,1982年"のとじま臨海公園水族館"の開館ならびに能都町真脇遺跡におけるイルカ多量出土,ついで1984年羽咋市滝海岸コマッコウ漂着,1985年七尾市大杉町で中新世の地層からクジラ化石骨1体分発掘,そして1988年セト研発足の直接契機となった能都町と富来町におけるメソプロドンの水揚げ・漂着であります。山田致知先生を中心として発足したこの会に,医学・生物学・古生物学・水産学・歴史学・考古学・民族学など様々な分野の研究者や一般愛好者が馳せ参ずることになりました原動力には,この10年間の出来事が大きく影響していると思います。
本大会では,アメリカ合衆国の海棲哺乳類センターでご活躍中のアール・リッチモンド氏による特別講演のほか,口頭発表10題,ポスター発表8題,鯨類化石展示,新設まもない"海と渚の博物館"などの見学を予定しております。リッチモンド氏の特別講演が実現の運びとなりましたのは,同氏らと共に海棲哺乳類の調査や救助活動にたずさわってこられた荻野みちる会員(国立科学博物館友の会)のご厚志によるところが大きいことを覚え,ここに深く感謝の意を表します。海外からの講演者は,昨年の記念大会において,ニュージーランドのオタゴ大学からR・イーワン・フォーダイス博士をお招きしたことにつづく快挙であります。また,釜山に設立された水産業史研究所の朴九秉所長(本会外国会員,元釜山水産大学資源経済学科教授)が寄せられた韓国情報に基づくオウギハクジラのポスター発表が予定されています。朴先生とは,1990年に韓国先史時代岩刻画で有名な盤亀台までご案内いただいて以来,文通を続けていますが,今年4月に私のもとに寄せられたお手紙と写真により,韓国にもオウギハクジラが漂着していたことが判明しました。
以上のように,北陸の地で活動が開始されたセト研は,環日本海はもとより環太平洋的な規模で交流をもつようになりました。鯨類ならびに鯨類学に国境はありませんから当然といえば当然ですが,このような活動が展開できるのも,ミニ学会とはいえ,多士済々の会員を擁しているからでしょう。日ごろの地道な活動をふまえ,近い将来,セトロジー関係の国際シンポジウムを開催することができれば幸いです。
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