自転車を活かしたまちづくり

 
三国 千秋
「地球友の会・金沢」代表

世界連邦石川 35:1(2006.8.1)


テーマは「交通と環境」

「地球の友・金沢」は地域の小さな環境グループです。最初はマレーシアの熱帯林保護を目的に活動していましたが、ここしばらくは身近な「交通と環境」をテーマに自転車を活かしたまちづくりに取り組んでいます。

なぜ自転車かというと、私たちは車や徒歩と並んで自転車も重要な交通手段として位置づけているからです。私たちはこれまで地域の小・中学生、高校生や保護者のみなさんの協力を得て、四つの「自転車・歩行者安全マップ」を作ってきました。この地図は自転車や歩行者の視点から見て、金沢市内の道路や交差点のどこが危険でどこが安全かを調査したものです。調査を下に、これまでに三十個所以上の道路や信号・歩道などが改善されました。

自転車の魅力

今年はさらに、デンマークでの例を参考にして、十週間の「2006エコサイクル・プロジェクト」(自転車で通勤・通学・お買い物)をスタートさせました。このプロジェクトには三八五人の参加があり、年齢も目的もまちまちですが、多くの人々がこの機会に自転車に乗ろうと考えたようです。

最初は少しでも「地球温暖化防止」に役立てばと思って始めたことですが、実施してみると他にも多くのことが見えてきました。自転車は健康に良い乗り物であり、車に比べてゆっくりしたスピードの自転車からはいろんなものが見えてきて、市内の町並みでは思いがけない発見や驚きがあります。また自転車はどこにでも止まれるので、自分のペースに合わせて移動することが可能です。

生き物と機械の違い

私たちの暮らしの中には多くの機械が見られますが、その代表的なものは自動車でしょう。機械の目的は暮らしを便利にすることですが、私たちは時には機械を自分に合わせるのではなく、機械のスピードに自分を合わせていることがあります。しかしながら、生き物は機械ではありません。生き物と機械の大きなちがいは、生き物には生命があるが機械には生命がないということです。環境とは「まわりを取り巻くもの」という意味ですが、アメリカの作家ウェンデル・ベリーが述べているように、環境を構成しているものもまた生き物です。環境保護にとってこのことは大事なことだと思います。

根気よく継続すること

最近、小さな子供の命を奪うとか、他人を傷つけるといった事件があとをたちませんが、これは生き物を機械のように見なしたり、機械のように扱うことから生じていると思います。生き物を機械のように見なす人間が環境を大切にするはずはありません。

最後に、世界平和と同じく環境問題も大きな問題です。アメリカの「カトリック・ワーカー運動」の指導者であったドロシー・デイ(一八九七〜一九八〇)は、あるとき地域での問題のあり方に絶望し失意のどん底に落ち込みながらも、むしろ謙虚な気持ちになって、大きな問題は少しずつ解決していくしかないと悟ったのでした。環境問題でも長く続けることが大事だと思います。