講演要旨

「世界連邦運動の現状と課題」
―国連改革のために日本は何をなすべきか―


世連日本国会委員会事務局長 塩 浜  修

 
 
世界連邦石川 34:3(2006.2.1)



世界連邦は歴史的必然

幕末の坂本竜馬や高杉晋作らは、世界の中の日本の立場を考えたとき藩を超えて一つにまとまった。いわゆる廃藩置県は世界連邦の日本版であった。今日、地球環境問題はじめ二〇〇一年の九・一一テロ等、一国だけでは解決できない大問題が多発している。国家や国益が大切なことは言うまでもないが、それだけにとらわれているともう立ち行かなくなってきた。世界を一つにしたいからと言って、強大な軍事力をもつ国が独裁支配するのでは甚だ危険である。そこで法による支配、即ち世界連邦の実現が必要になる。

“鎌倉幕府型”が現実的

私は、世界連邦は歴史的な必然であり、実現可能と考えている。議論している前に、もうルールがないと世界の現実対応は間に合わなくなってきている。私は、世界連邦は日本国憲法が出来たときのように立法・行政・司法の三権体制が一挙に揃うという型ではなく、鎌倉幕府型が現実的と考えている。即ち一一九二年に鎌倉幕府が出来、将軍の下に侍所、公文所、門注所あるいは地方には守護、地頭などといった機関が必要に応じて順次整備されていったようにである。

例えばICC(国際刑事裁判所)は、すでにオランダのハーグで開設されている。これこそ世界連邦の“司法版”というべきもの。ところが日本は国内法が未整備との理由でまだ入っていない。アメリカも未加入だ。先のクリントン政権はICC条約に署名したが、現ブッシュ政権はその署名を撤回している。ICCにはイギリスやカナダは入っている。日本が加入したからといって日米関係に影響はない。日本は、何処の国よりも国際法をしっかり守る国であることを世界に示し、信頼を高めていくべきだと思う。

ブ政権が世界連邦を誘発?

国連改革では、安保理の五大国拒否権や、国連憲章第五十三条・百七条にみる敵国条項など非民主的な条項が多い。平和に対して一番責任を負わなければならない拒否権をもつ大国が、武器を海外に売りまくりその責任に相応しい行動をとっていない。現在のブッシュ政権は、世界連邦的発想と逆の方向を向いているように思われる。環境問題に関する京都議定書然り、対人地雷禁止条約、CTBT(核実験禁止条約)、ICC条約然りである。しかし歴史には振り子作用がある。ブッシュ政権は、ある意味で世界連邦的流れを誘発しかねないともいえよう。

若者を仲間に入れよう
 
さて日本の国会は昨年八月二日、世界連邦実現を国是とする国会決議を採択した。この決議は日本の進む道しるべを内外に明示した。今後、世界連邦の理念を若い世代に伝えていかなければならない。そのためには、短中期の具体的な目標も示すことが必要だ。ICCに早く日本が参加し、三年後の裁判官改選に日本人の裁判官を送り込めるよう目指すのもその一つだろう。