国連の弱点克服こそが大切
―若い世代につなごう世連運動―

平口 哲夫 (金沢医科大学教授)

世界連邦石川 29:1(2003.8.1)



はじめまして。今年三月に入会した新参者です。イラク戦争の経緯をみていて、「こんな国連ではだめ。世界連邦でも設立しないと」と思い、そういえばそういう運動があったはずだと、インターネットで検索、世界連邦運動協会のホームページを読んで、さっそく入会することにいたしました。本部の会員になり、一ヵ月以上過ぎてから金沢支部にファックスで連絡をとったところ、事務局からご返事があり、よろしかったら支部のほうにとの誘いをうけましたので、そのようにさせていただきました。よろしくお願い申し上げます。

七月早々に事務局の方が当方を訪ねて来られ、入会の動機などについて本誌に寄稿するようにとのこと。実は、入会以来、ファックスやEメールで何人かの会員の方々と連絡を取り合っていたのですが、会員に直接お会いするのはこれが初めてでした。

ところで、第二十七号において橋爪義守氏は、世界連邦国家のもとでの「小さな国益を越えた人類益、或は地球益」について説かれています。まったく同感です。目先の利益を優先させることが長期的にみて国益になるかどうか、よく考えてみる必要があります。そもそも各国が目先の利益に固執して「国益」ばかりを主張し始めたら、国際協調など成り立つはずがないでしょう。

「日本の政策判断を憲法と国連制度の枠内でしかとらえることのできない時代は終えんしている」と主張する人がいますけど、はたしてこれまでほんとうにそのような時代だったのでしょうか。実際には「枠外」で政策判断がなされることもたびたびあったように思います。むしろそれが問題です。

日本国憲法前文に明記してある「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」という戒めを軽んじ、国際情勢に流されるまま、近視眼的に国益追及を優先させるようでは困ります。現在の国連は欠点だらけですが、無意味な存在に堕しているわけではありません。国連を見限るのではなく、現実の国際問題を解決する力をもった組織に大改革すること、つまりは世界連邦の実現に近づくことこそ肝要であり、そのために貢献することが、日本はもとより世界の国々の国益につながると思います。

「日本は米国の州みたいなものだから」と自嘲気味に言う政治家がいますが、こういう情けない態度ではなく、もっと気概をもって国政・外交に取り組んでもらいたいですね。米国がまともにリーダーシップをとり、日本も良きパートナーとなって世界連邦を樹立し、各国が主権の一部を連邦に委譲して「州」のようになるというのなら、大いに賛成です。

私は、考古学研究者ですが、勤務先では歴史・人類学系の授業を担当しています。平成十四年度から、教養科目は第一学年で開講される総合人間科学という科目に統一されました。学生は、三学期制のカリキュラムにおいて、学期ごとに完結する複数の総合人間科学授業の中から、六授業を選択することになっています。私は学期ごとに二つの総合人間科学授業を担当、そのうちの一つが「戦争と平和」です。このようなテーマを掲げる以上、関連学会で研鑚したいと思い、日本平和学会にも入会いたしました。

昭和二十年、誕生後百日目にB二九編隊の空襲をうけ、敦賀の生家は灰燼に帰しました。いまこうして世界連邦運動に連なることに深い意義を感じます。会員の高齢化が問題になっており、私も数年で還暦を迎える歳ですが、若い世代にこの運動が受け継がれていくように、まずは自分自身が学ぶことから始めたいと思っております。