論文フォト 北陸の旧石器文化


文 献

写 真

石川県辰口町灯台笹遺跡1970年発掘調査における掻器出土状況

この発掘調査は、旧石器研究を目的としたものとしては北陸最初のものであり、東山系石器群の一端を明らかにした(平口・吉岡, 1971)。


金沢市犀川の大桑(おおくわ)橋から上流を望む(1996.12)

動物化石群を産出する大桑(おんま)層の標識地として知られる。大桑層は、第四紀更新世前期(約160〜80万年前)の地層であり、主として海産動物の化石を産出している。最上位からはゾウやシカの足跡も発見されているので、日本の前期旧石器時代の上限がこの頃までさかのぼるならば、大桑層で前期旧石器時代の人類遺物が発見される可能性も出てくることになる(平口, 1996)。

大桑(おんま)動物化石群の存在は、1927年に「大桑の貝殻淵」採集の貝化石が学会報告されて以来、広く世に知られるようになったが、当時は現在の大桑(おおくわ)を地元の人たちがオンマと呼んでいたため、地層名としては「おんま」が学会に定着した。

私は子供のころ、大桑の川で泳ぎを覚えたのだが、「オンマで泳いでこよう」などと言っていたことは確かだ。しかし、昔から現在の大桑(おおくわ)地域すべてがオンマと呼ばれていたのか疑問である。古代に加賀国加賀郡八郷のひとつとして大桑郷があった。『和名抄』ではこれに「於保久波」と訓がうたれていることからすると、大桑(おおくわ)という地域の一部に通称オンマという場所があったと考えたほうがよい。本来ならこの化石産地は、金沢市大桑の通称オンマというところにあるという認識のもと、大桑層ではなくオンマ層と命名すべきであった。

金沢ひまわり平和研究室 平口哲夫執筆の文献  管理者 平口哲夫