O1 噴火湾の定置網に混獲されるネズミイルカについて○松石隆・本野吉子・常田悠・三浦健治(北海道大学大学院水産科学研究科), 本間義治・牛木辰男(新潟大学大学院医歯学総合研究科) Habour porpoises Phocoena phocoena incidentally caught by the set nets in Funka bay, Hokkaido, Japan. Takashi Matsuishi, Yoshiko Honno, Yui Tokita, Kenji Miura (Hokkaido University, Graduate School of Fisheries Sciences), Yoshiharu Homma, Tatsuo Ushiki (Niigata University, Graduate School of Medical and Dental Sciences)
【目的】 ネズミイルカPhocoena phocoenaは,沿岸性の小型鯨類で,大西洋などでは漁網への混獲によって個体数が減少している.日本では,北海道噴火湾臼尻漁港沖に設置される大規模な定置網で毎年,混獲があることが知られているが,Gaskin(1993)を除けばその他の情報はほとんど無い.定置網に混獲されたネズミイルカは,いったん漁獲物と一緒に漁船に引き上げられ,網外で放流されるが,漁船に引き上げる前に漁獲物の中で身動きが取れない状態になり,溺水する可能性がある.しかし,混獲後の生死についての情報はない.本研究では,臼尻漁港沖定置網におけるネズミイルカの混獲状況および混獲個体の生物学的特性を調べた.また,一部の個体については収容し混獲後の生死を調べた. 【方法】 2002年4月10日〜5月16日,2003年4月8日〜23日,臼尻漁港にて,臼尻漁業協同組合および久二野村水産株式会社の定置網にネズミイルカの混獲の有無を,漁船への調査員の乗船又は乗組員への聞き取りによって調べた.2002年の調査では,混獲個体が収容可能である場合は,速やかに北海道大学臼尻水産実験所の円形水槽(直径6m,水深1m)に移送し,呼吸や行動が安定するまで,遊泳を補助した.水槽搬入直後より,行動をビデオカメラにて撮影した.収容個体のうち体調に問題が無い個体は,小樽水族館に移送して長期飼育した.
【結果】 確認された混獲個体は表の通りである.2002年は,雄4個体,雌1個体,性別不明5個体の合計10個体の混獲が確認された.このうちP0203,P0207は実験所収容直後に死亡し,解剖に供した.P0210は5月15日に死体が網内で発見された.2003年は,雄3頭,雌3頭,性別不明1頭の合計7頭の混獲が確認された.どの個体も漁船上では生存しており,放流した.混獲個体の体長は120p〜160p(平均135.8cm)であった. 顕微解剖の結果,P0203(雄)の精小管には,多くのセルトリ−細胞と少数の始原生殖細胞および精原細胞が見られ,小管腔はまだ十分に形成されていなかった.精巣網の吻合管も狭く,間質組織中のライデイッヒ細胞は未分化の状態にあった.また,P0207(雌)の卵巣には,1次,2次卵胞のほか,閉鎖卵胞が存在していたが,グラ−フ卵胞は見られず,卵管上皮には粘液分泌物が検出されなかった.この個体も,未熟幼鯨であることが分かった. 今後,定期的に混獲状況調査を行うとともに,収容後の観察から得られた水槽内の行動記録の解析,および水族館等での実験などを元に,ネズミイルカ混獲のメカニズムの解明と防止法を探っていきたい. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O2 2002年度における佐渡海峡の佐渡航路船(佐渡汽船)による鯨類目撃記録○本間義治(新潟大学大学院医歯学総合研究科),古川原芳明(佐渡汽船) Sighting records of whales by the Sado Liner ships (Sado Kisen) operated on Sado Strait,Sea of Japan,during 2002. Yoshiharu Honma (Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences), and Yoshiaki Kogawara (Sado Kisen)
前報に引き続き,佐渡海峡の3航路を航行する佐渡汽船による鯨類目撃記録を整理し,従前の記録と比較検討した.2000年度よりは,クジラ類(目測で全長4〜5m)に限り,イルカ類は除いたが,これは既報のように,最近の海上浮遊障害物監視情報(鯨情報)の中に占めるクジラの目撃件数が増加してきたためである(本間・古川原,2001,2002,2003). 2002年度は,ジェットフォイル(J)3隻とフェリー(F)2隻を運航する新潟航路(新潟〜両津間)が45件,J1,F2の直江津航路(直江津〜小木間)が21件,F1の寺泊航路(寺泊〜赤泊間)が2件であった.これらの記録を,前年の2001年度と比べると,新潟航路は53/45,直江津航路は46/21,寺泊航路は5/2となり,ことに後の2航路では,前年度の半数にも達しなかった.しかし,それでも2002年度は2000年度を遥かに上回る件数であった. 月別には,新潟航路の4月(18件)が群を抜き,次いで3月(8)と,春の目撃頻度が高かった.これは,2001年度においても4月(17),3月(16),5月(16)であったのと似ている.一方,直江津航路では7月(10)が最も多く,次いで6月(6)であったが,2001年度では7月(17),次いで4月(12)であった.このように,直江津航路では春より初夏の方にシフトしていたが,精々100〜120 kmの両航路間の相違は,うまく説明できない.注目すべきことは,新潟航路で2002年4月16日に,7回も目撃されているので,2001年3月22日(8)の例と共に,日によっては同一個体ないし群れを,行き交う別船が観察・記録した可能性も否定できない. 時間帯では,新潟航路で16時(7)と9時(6)の頻度が高く,直江津航路では15時(7)と12時(5)であった.2000年度と2001年度の記録を加味すると,午前・午後共にクジラに遭遇するが,15時頃に最も見る機会が多いといえる. JとCを比べると,新潟・直江津両航路共にJのほうがCの倍以上に記録しているが,新潟ではJの運航回数が多いので理解できるものの,直江津の方の解釈は難しい.単純に,人為努力的なものに帰すことができるのであろうか. クジラ種の決定が出来なかったことは,従前通りであるが,遊泳の方向も決めがたい.3航路合わせて北〜東方向が8例,南〜西方向が7例であったが,1994年以来の記録を一括すると,北〜東が29例,南〜西が31例となる.ただし南下だけに限ると20例で,北上だけの14例を上廻っていたが,これはクジラの種による差異を全く考慮できないままの結果である. ところで,海上保安庁第9管区海上保安部の,ヘリコプターによる監視飛行の際に発見されたクジラの群れは,比較的種名が明らかにされている.今後は,これらの資料や遊漁船などの情報も蒐集して回遊方向を見出し,クジラ類の行動・生態を解明する一助にしたい. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O3 富山湾におけるコククジラの記録○南部久男(富山市科学文化センター),山田格(国立科博),石川創(日本鯨類研究所) Records of gray whale, Eschrichtius robustus, in Toyama Bay, Sea of Japan. Hisao Nambu (Toyama Science Museum), Tadasu K. Yamada (National Science Museum), and Hajime Ishikawa(Institute of Cetacean Research)
日本海側中央部に位置する富山湾(富山県側)では,ストランディング等により,13種の鯨類が記録されている(南部他,2001).発表者等は富山湾の鯨類の生息実体を明らかにするため,近年のストンディング等の調査に加え,埋もれた過去の生息記録の調査も行っているが,今回,富山湾(富山県側)で初めてコククジラの生息記録を確認した. 大隅(1996,1998)によれば,コククジラの北大西洋個体群は絶滅したとされるが,現在北太平洋にアメリカ系個体群とアジア系個体群が知られ,前者の推定個体数は23,000頭,後者は100頭前後とされる.アジア系個体群は,海南島から中国,朝鮮半島,日本,シベリア沿岸,サハリン島北東岸,カムチャッカ半島南西岸まで分布し,沿岸性が強く水深50m以浅で生活するとされる.冬期に亜熱帯で出産し,春に北上回遊を開始し,5-10月に寒帯の浅海で索餌し,11月には南下回遊するとされる.アジア系個体群は,夏の摂餌海域であるロシア共和国サハリン沖東部沖が石油と天然ガス開発のため,危機的状況にあるとされる(ブライス・ホツブス,山田格,2002). 日本列島の日本海側での本種の捕獲記録は,西側では山口県以西と考えられ(笠原,1950;Omura,1988),東側では北海道の捕獲記録がある(農商務省水産局,1899).また,日本列島沿岸での確認記録は極めて少なく,1959〜2003年にかけ12例の確認記録があるが,その内太平洋側のものが10例で,日本海側では北海道と新潟県で頭骨及び死亡漂着個体の2例2個体のストランディング記録があるに過ぎなかった(日本鯨類研究所ストランディングデータベース030508; Kasamatsu and Ishikawa,1990).生きた個体の生息記録は日本海側では確認されておらず,回遊の実体は不明であった. 今回,写真により富山湾(富山県側)沿岸の浅海に設置されていた定置網に入網した2例2個体の生息記録を確認した.1例は,1955年3月16日に定置網に入網した1個体である.2例目は,1970年4月に定置網に入網した1個体である.ともに沿岸に設置された定置網に入網していることから,両者とも日本海の日本列島沿岸を北上する途中の個体と思われる.また,石川県や新潟県でも生息を示唆する文献が見られた(農商務省,1893;中村,1939).これらのことから,日本海の日本列島沿岸もアジア系コククジラの回遊ルートの一つであることが示唆された. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O4 鹿児島県に漂着したタイヘイヨウアカボウモドキ(Indopacetus pacificus)について○山田 格(国立科学博物館),久保信隆(いおワールドかごしま水族館),石川創(日本鯨類研究所),角田恒雄(神奈川大学,国立科学博物館),後藤睦夫(日本鯨類研究所),Merel Dalebout(University of Auckland) On Longman's beaked whale stranded in Kagoshima. Tadasu K. Yamada (National Science Museum, Tokyo), Nobutaka Kubo (Kagoshima City Aquarium), Hajime Ishikawa (Institute of Cetacean Research), Tsuneo Kakuda (Kanagawa University, National Science Museum, Tokyo), Mustsuo Goto (Institute of Cetacean Research), Merel Dalebout(University of Auckland) 2002年7月26日,鹿児島県川内市の海岸にアカボウクジラ科鯨類がストランディングした.国立科学博物館とかごしま水族館は神奈川大学,日本鯨類研究所,九州大学,オークランド大学(ニュージーランド)の協力を得て同定作業を行った結果,本個体はこれまで我が国近海では知られていないタイヘイヨウアカボウモドキ(Indopacetus pacificus)であるとの結論に到達した. 同日午前10時45分頃,川内市西方人形岩付近の砂浜で,体長 6.48mメスの種不明アカボウクジラ科鯨類のストランディングが発見された.発見時は生きていたとの情報もあったが,かごしま水族館が調査のため現場に到着した時には死亡していた.この日は外部計測,胃内容物採取を終え現場付近に仮埋設した.この時点では鯨種をツチクジラと推定していたが,写真鑑定の結果から日本では未知の鯨種である可能性が高いと判断し,後日発掘のうえ再調査することを決定した. 8月3日,かごしま水族館,国立科学博物館,日本鯨類研究所,九州大学は県及び市の協力を得て鯨体を発掘後,外部形態の観察など再調査を行い,全身骨格を確保した.また種同定のために必要な遺伝子標本の他,環境化学調査などの試料も採取した. 体形は,紡錘形の側面観をもち,やや左右から圧平されたように側扁する.背ビレ位置は吻端から体長の約70%にあり,胸ビレ長は体長の約10%,尾ビレの幅は体長の約20%.頭部では吻が長く,メロンへの移行はなだらかである.メロンは長く,頭骨による隆起よりも幅が狭い.頬が大きく膨隆する.喉元にはアカボウクジラ科特有のV字形の溝がある.歯は下顎先端に一対のみ存在したものと考えられるが,右側は発見時にすでに抜去された形跡があった.歯は高さ約40mmの円錐形で,歯肉下に埋もれている.胸ビレはアカボウクジラ科に共通の直線的なオール状であり,腋窩にはわずかにポケット状の陥凹がある.背ビレは高く,三角形.体色は全体にやや明るい灰色であるが,メロン付近から吻にかけて明るい褐色で,暗褐色の細長い斑点が散在する.全身にダルマザメによると思われる傷痕があり,特に生殖孔と肛門付近では傷痕が密集する.新しい傷痕にはクジラジラミが多数発見された. 本個体の頭骨をLongman(1926),Azzaroli(1968)と比較すると,頭骨の慨形,前頭骨背側面の溝,涙骨の形状などいずれの部分も著しく類似している.表皮組織片から抽出したDNAをPCR法で増幅し,ミトコンドリアDNAのほぼ全配列を明らかにした.ミトコンドリアDNAのチトクロームb領域とD-loopの配列をオークランド大学所有のヘイヨウアカボウモドキのタイプ標本などの配列と比較したところ,いずれもほぼ完全に一致した. 本個体は,頭骨の形態学的特徴やミトコンドリアDNAの配列などからタイヘイヨウアカボウモドキ(Longman's beaked whale)Indopacetus pacificus (Moore, 1968)と考えられる.メスの成熟個体であり,高齢個体である可能性もある. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O5 歯の非脱灰研磨標本によるオウギハクジラの年齢査定と査定年齢の検討○新井上巳,高野吉郎(東京医科歯科大学大学院),山田 格(国立科学博物館動物研究部) Age estimation of Mesoplodon stejnegeri by undecalcified ground section of the tooth with some comments on the estimated age. Kazumi Arai, Yoshiro Takano (Graduate School of Tokyo Medical and Dental Univ.), Tadasu K. Yamada (Dept. of Zoology, National Science Museum, Tokyo)
オウギハクジラのストランディングはセト研会員の方々の協力などにより,日本海では決して珍しい種ではないらしいことが明らかになりつつある.しかし,依然オウギハクジラの生態については不明の点が多い.我々は数年来,生活史の基本的な情報である年齢の査定を試みている.鯨類の年齢査定で通常用いられるのは歯である.歯は骨と違い吸収・再構築されることがないので,歯に形成される成長層を数えて年齢を査定することができる.オウギハクジラの雄の場合,象牙質は比較的早い段階で歯髄腔を埋め,成長層の観察が難しくなる.一方セメント質は出生前に沈着を開始し終生沈着を続けるので,セメント質を年齢査定のための観察部位とした. 歯冠?歯根軸に平行な頬舌面で薄片を切りだし,エッチング標本,非脱灰研磨標本,脱灰ヘマトキシリン染色標本を作成して成長層を比較した.非脱灰研磨標本を暗視野で観察すると,光を乱反射させ白く光る不透明層と,光が直進するために暗く見える透明層からなる成長層(Growth Layer)が明瞭に観察された.他の2つの方法と比較した結果この方法が最も簡便かつ確実なセメント質成長層の観察法と判定され,同法を用い日本海沿岸でストランディングした6個体の雄と1個体の雌のオウギハクジラの歯(各1歯)について観察した.全ての個体に共通してGLの周期的な変化からなる成長層群Growth Layer Group(GLG)が観察され,最外層に周期性を伴わない成長層GLが観察されたものもあった. 鯨類で一般的にいわれている1年で1GLGが形成されると仮定すると,年齢は表の年齢1のように推定された.しかし一部の歯に幅の狭い透明層をもつGLGと幅の広い透明層をもつGLGが交互に繰り返し表れ,両者を1周期として1年で2つのGLGが形成される可能性が示唆された(表-年齢2). 今後,雌を含め個体数を増やしGLGのパターンの解析等更なる検索を進めたい.
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O6 北海道における鯨骨製記念物の分布水島未記(北海道開拓記念館) Distribution of whale bone monuments in Hokkaido. Miki Mizushima (Historical Museum of Hokkaido)
日本では,古来より捕鯨や漂着鯨の利用などで人と鯨類との関係には深いものがあり,そのような関係を示す物が様々な形で残されている.鯨類の墓や供養塔などの「記念物」類はその代表的なものと言え,進藤(1970)「瀬戸内海周辺の鯨塚」および吉原(1977)「鯨の墓」により全国各地の例が詳しく調査されている. 鯨に関わる「記念物」の中には,鯨骨そのものを用いたものも少なからず見られる.北海道においては従来そのような鯨骨製の記念物についての報告はほとんどなかったが,演者は余市町の神社に置かれていた鯨類の頭骨4点(シャチ2個体・ミンククジラ・ネズミイルカ)について調査し,報告(水島 2001「余市町豊浜の稲荷神社に置かれていた鯨骨」)するとともにセト研12回大会において紹介した. その後の調査で,別の3か所で鯨骨製の記念物の現存を確認し,現存しないが昔はあったという情報も数か所で得た(水島 2002・2003「北海道南部に見られる鯨骨製記念物」・「同 (2)」).現存例のうち2か所は新潟県佐渡島にあるものと同様の下顎骨を垂直に立てたものであり,残る1か所は頭骨を寺院の境内に置いたものであった.骨はすべてヒゲクジラのもので,1点はナガスクジラ以上の大きさである. この時点で現存が確認されたのは余市も含めて4か所,鯨骨は計7点であったが,2003年5月,これら鯨骨製記念物の存在を地元紙およびTV局が報道したところ,さらに数か所から新たな情報が寄せられた. 本報告では,そのような最新の情報を含む北海道での鯨骨製記念物の分布について紹介し,それらが残された背景や意味について考察する. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O7 韓国における盤亀台岩刻画についての社会的評価―韓国テレビで放送された特集番組を中心に―○蛭田 密(Aquatic Animal Consulting),李ハナ(淑明女子大学・言論情報学専攻),鄭 現瑚(全羅南道水産試験研究所水産総合博物館),金 景鍾(Pacific Land),森田勝昭(甲南女子大学・歴史人類学),平口哲夫(金沢医科大学) Social valuation of rock engravings at Bang-dae in Korea, for the main discussion on a special program of KBS TV. Hisoka Hiruda (Aquatic Animal Consulting), Hana Lee (Sookmyung Women's University, Telecommunication),Hyun-Ho Jeong (Cholla-namdo Fisherries Exhibition), Kyong-Jung Kim (Pacific Land), Katsuaki MoritaKatsuaki Morita (Konan Women's University, Anthropology), and Tetsuo Hiraguchi (Kanazawa Medical University) 1999年11月に韓国放送(KBS)のテレビで放送された歴史スペシャル番組「3000年前のクジラ捕り:蔚山(ウルサン)岩刻画の秘密」は,通常,ダムに水没していて,見ることのできない彫刻群の映像を提供してくれるだけでなく,盤亀台(バングデ)岩刻画が韓国社会にどのように受けとめられているかを知る手がかりのひとつにもなる. 2001年6月,蛭田は,友人の鄭現瑚から送られてきた録画ビデオを見たあと,盤亀台岩刻画に深い関心を寄せている平口に意見を求めた.このビデオを鑑賞した平口は,セト研大会での紹介を提唱,概略でもよいから翻訳をするように蛭田に勧めた.蛭田は友人の金景鍾の協力をえて翻訳に着手したが,作業はなかなかはかどらなかった.2003年5月,長崎県生月町で開催された第2回伝統捕鯨地域サミットで平口は,同席した森田にこのビデオの翻訳について相談したところ,同じ内容のDVDがKBS関係から発行されていて,森田がそれを所持しているということを知らされた.そこで,画像のきれいなDVDによる紹介を行うことにし,森田を介して李(イ)ハナに翻訳を依頼した.第14回大会が間近に迫った段階での依頼であり,また翻訳者が多忙であることから,現時点では抄訳にとどまっている.そこで,盤亀台の報告書(黄壽永・文明大,1984)や関連論文(平口,1990;1991)などにより補足しながら録画を紹介することにしたい. 盤亀台岩刻画は慶尚南道(キョンサンナムド)蔚州郡(ウルジュグン) 彦陽面(オンヤンミョン) 大谷村(デゴクチョン)にある.蔚山湾にそそぐ太和江(テワガン)の上流部,盤亀台付近のダムの西岸に位置する岩壁北面に多数の絵が彫刻されている.1972年1月の異常渇水時に,それまでダムに水没していた岩刻画が姿をあらわし,東國(ドンクック)大学の文明大(ムン・ミョンデ)教授らによって偶然発見され,調査されることになった. 文教授は,インタビューに答えて,横6m縦3mぐらいの範囲に220〜230例(重ね彫りの絵を含めれば300例以上)の動物が描かれていると思う,と述べている.しかしながら,報告書等で確認されているのは,シカ科・ネコ科・イノシシ(またはブタ)・ウシ?・ウサギ・イヌ科などの陸生動物88例,鯨類・鰭脚類(オットセイ?)・カメ・魚類などの水生動物75例,人物8例,船・綱・柵などの狩猟・漁撈図10例,鳥類1例,その他9例,合計191例である. この番組は,「私たちは今まで過去の社会を住居跡から発見されたさまざまな遺物を通じて間接的に理解していた.しかし,盤亀台岩刻画は当時の生活をより具体的に,写実的に描いている.ここに盤亀台岩刻画の価値がある.これは記録よりもっと正確な歴史である」という言葉で結ばれている. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O8 盤亀台遺跡の捕鯨図・鯨類画をめぐる日韓の動向平口哲夫(金沢医科大学) Looking the trend of Japan and Korea about whaling and cetacean pictures of rock engravings at Bangu-dae. Tetsuo Hiraguchi (Kanazawa Medical University) セト研第14回大会研究発表O7で紹介のKBSテレビ・スペシャル番組「3000年前のクジラ捕り:蔚山岩刻画の秘密」(1999)によれば,盤亀台岩刻画には現在韓国沿岸で見られる10種の鯨類が描かれているという.しかし,この番組で具体的に種名が掲げられているのは,マッコウクジラ,セミクジラ,シロナガスクジラ,シャチ,コククジラ,計5種のみである.しかも,コククジラという種名で紹介されている映像は,実はコククジラではなく,セミクジラ(またはホッキョククジラ)やザトウクジラのものである.コククジラの特徴(咽喉部の短い畝または溝)を示す絵が盤亀台岩刻画に見られるにもかかわらず,そのことを指摘した論文(平口,1990;1991)の情報が正確に伝わっていないという感がする. シロナガスクジラとされたものは,盤亀台岩刻画の中で最大(全長75.5cm),体軸に沿って10本以上の畝が長く表現されていることから,ナガスクジラ科のクジラの腹面を描いたものと考えられるが,韓国近海に回遊してくる頻度の高いナガスクジラ類に絞るならば,シロナガスクジラよりもナガスクジラである可能性が高い.ナガスクジラ科のクジラの中で比較的捕獲しやすいのはザトウクジラであり,この絵に描かれた鯨体のプロポーションはナガスクジラ類よりもザトウクジラに近いが,しかし前鰭はザトウクジラほど大きく描かれておらず,また,盤亀台岩刻画の鯨類は実際よりも前後に圧縮されて描かれる傾向がつよいことから,やはりナガスクジラである可能性が高いと思われる. この番組では,従来演者が種の同定を保留してきた絵について,肯定的に受けとめることのできる指摘もいくつかなされている.その一つに,鯨体腹面の頭部側に点刻がなく,尾部側に点刻があるという例について,点刻のない部分はシャチの大きな白斑に相当するという見解がある. 盤亀台岩刻画にはクジラと船を組み合わせた捕鯨図が2組あり,一方の図は,船の全長18.5cm,19名もの漁師が乗り込んでおり,舳先の人物が持つ綱は船体とほぼ同じ長さの鯨体につながっている.この番組で紹介された図の場合,綱に浮き袋がついているように表示されているが,報告書(黄・文,1984)ではそのような表示はされていない.あたかも浮き袋に見えるのは単なる岩のくぼみにすぎないと否定する人もいるのである. もう一方の捕鯨図は,7人の人が乗った船と2頭の鯨類が組み合い,大きいほうのクジラは船体の2倍の長さで描かれており,しかも格子状に区分けされている.番組では,この区分けを解体・分配作業を示すものとし,インドネシア・ラマレラ村のマッコウクジラ漁やエスキモーの鯨肉分配規則などを比較資料として紹介している. 岩刻画の描き方には,面全体を彫る面刻法と,輪郭だけを掘り出す線刻法の二通りがある.面刻画のほうが安定的に配置されているのに対し,線刻画は全体的に散漫に配置されている.面刻画の上に線刻画が刻まれている例があることから,面刻画を描いたあとの空間に線刻画を描いたと推測されている.また,面刻画には海生動物が多く,線刻画には陸生動物が多く描かれている.この違いについて,番組では,海進期に盛んだった海洋漁撈活動が海退とともに有畜農耕・陸獣漁活動に移行していったという説を紹介している.この説が成り立つためには,この自然的・文化的変化が3000年前,つまり紀元前1000年頃に起きたという証拠を明確に示す必要がある. | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
O9 日本海沿岸を中心とした漂着海棲哺乳類に関する肉眼病理学的報告-2002.06〜2003.04-○田島木綿子(東京大学大学院),新井上巳(東京医科歯科大学大学院),山田格(国立科学博物館) A report on gross pathological investigations of marine mammals stranded between June, 2002 and April, 2003. Yuko Tajima (The Univ. of Tokyo), Kazumi Arai (Graduate School of Tokyo Medical and Dental Univ.), and Tadasu K. Yamada (National Science Museum, Tokyo)
はじめに 国立科学博物館を拠点として進められている日本沿岸に漂着する海棲哺乳類調査の一部を過去3回の大会で報告した.今回も引き続き2002年6月から約1年間に日本沿岸に漂着した海棲哺乳類のうち国立科学博物館に情報が寄せられた症例に関して,特に演者らが深く関与した肉眼病理学的調査について報告する. 症例 病理解剖した症例数/科博が対応した漂着症例数:日本海側 13(オウギハクジラ6,スナメリ3,ハシナガイルカ2,カマイルカ1,ハセイルカ1) /39 ,太平洋側8 (スナメリ2,カマイルカ2,ハナゴンドウ3,オガワコマッコウ1) /51,瀬戸内海1 (ナガスクジラ属ヒゲクジラ1)/4,その他0/21,合計22/115.詳細は表1および2を参照. 所見と考察 [日本海側]オウギハクジラ:3症例(小浜:肝臓の高度脆弱化および褪色,心筋の線状白色部等.松任:全身性高度なうっ血,心筋の線状白色部,硬結感に富む褪色した甲状腺等.新潟:心外膜における多数の腫瘤形成)/6症例で漂着原因に関連するであろう所見を観察した.今回も腎臓にはCrassicauda属線虫寄生が腐敗高度のため検索不可能な1症例を除く全ての症例で観察された.胃内容物はイカビークおよびレンズ数個,ならびに外来性異物(各種ビニール製品,漁網魂等)を観察したが,食物肉質部は観察されず,完全空胃を1症例(小浜)認めた.生殖腺(メスでは乳腺を含む)および外貌観察より5/6症例は性的に成熟した個体と判断した.スナメリ:肺の線虫および肝臓内胆管の吸虫寄生をそれぞれ2/3症例で観察したが,漂着に結びつく程度ではないと判断する.3症例中2症例は特筆する所見を認めなかったこと,発見場所が漁網内であったことおよび胃内容物に食物肉質部を豊富に認めたことより,混獲である可能性が高い.他の1症例は尾柄部より先端が完全に消失しており,切断部は完全に治癒していた.これは尾柄部先端を失った後もある期間生存していたことを示す 稀有な例といえよう.このことは漂着原因と何らかの関係がある可能性も否定できない.ハシナガイルカ:本種棲息域は一般に熱帯から亜熱帯地域である.そのため冬場に日本海地域を回遊していることは個体の生存に大きく影響するのではなかろうか.過去の報告を検索しても本種の日本海側での漂着記録はない.2症例の膵管内に数隻の吸虫寄生を,1/2症例で脾出血などいくつかの所見を観察したが,漂着原因を特定するには至らなかった.ハセイルカ:得られたいくつかの所見のうち嚢胞形成を伴う甲状腺の高度な腫大が漂着原因に結びつく可能性が高い.カマイルカ:比較的豊富な半消化性胃内容物,高度な肺気腫をそれぞれ認めたが,特筆する病理学的所見は観察されなかった.カマイルカを除く全ての症例で直接の死因は肺水腫による呼吸器不全(海水誤飲による溺死の可能性大)であった.本文では太平洋側および瀬戸内海の症例についても報告する.
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