私の好きな讃美歌
461番「主われをあいす」

平口 哲夫


 素朴に信仰を言い表した歌詞、歌いやすいメロデ゙ィ、それが日本語の抑揚にマッチしていること。この三拍子そろった歌こそ私たちの讃美歌、特に児童讃美歌にふさわしいと言えるだろう。

日常、何気なしにひょいと口に出るこの歌は、たぶん教会に行きはじめのころに覚えたものであろうが、とりわけ印象深くなったのは、アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディにゆかりのあることを知ってからのことである。高校3年の卒業間もないころに、ソノシートの讃美歌集を買ってみたら、この歌が収録されていた。このレコード集は、大学卒業時に東北大学基督教青年会の寮生に譲ってしまったらしく、いま手元にない。よって正確に述べることはできないが、おおよそ次のような解説がなされていたと記憶する。第二次大戦中、海軍に入隊したケネディは、魚雷艇の艇長としてソロモン諸島海域の作戦に参加したが、艇が沈没して漂流、気がついたとき、島民が枕辺で励ましのために歌っていたのがこの讃美歌であると。

ケネディが大統領に就任した年に、私は高校に入学した。英語の先生が彼の就任演説を教材に利用なさった。彼はアメリカ史上、最年少の43歳という若さで大統領に当選した。この4月で私もついに40代の仲間入りをする。「諸君のために、諸君の祖国が何をなすことができるかを問うのではなく、諸君こそ祖国のために何をなすことができるかを問う」という、彼の名句を、もし我が国の現首相が言ったとしたら、何を意図しているのかと勘繰りたくなるような最近の風潮である。平和を守り作りだすために何をなすことができるかと、私はいま自問している。

「主われをあいす」は、のどかな子どもの歌声で心に響いてくるが、それとは裏腹に、この讃美歌からの連想は、ケネディの衝撃的な悲劇にどうしても結びついてしまう。生まれて百日目に空襲にあった私にとって、戦後何年は自分の年齢でもある。「われ弱くとも」、あの惨禍を繰り返さぬ努力をしたい。

 (すなどりNo.107、日本基督教団若草教会1985から転載、改訂)

*添付の画像は、2012年3月26日ヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂にて撮影した写真を加工したもの。

金沢ひまわり平和研究室 平口哲夫執筆の文献   すなどり 管理者 平口哲夫